学会誌「産業・組織心理学研究」

就職活動における集団間の不公平が不公平是正政策への支持的態度や企業への原因推論に与える影響: 獲得的地位に基づく不公平に注目して

伊藤 健彦(東京大学)

唐沢 かおり(東京大学)

本研究の目的は、就職活動における集団間の不公平が政府の不公平是正政策への支持的態度や、個人の否定的結果における企業への原因推論に与える影響を検証することである。現在まで獲得的地位による不公平と生得的地位による不公平の違いを明確にして、不公平が政策への態度や社会構造への原因推論に与える影響を検討した研究は見当たらない。そこで本研究では、学歴を用いて獲得的地位による集団間の不公平を設定して実験を行った。実験では、就職活動状況が描かれたシナリオが実験参加者に提示され、集団間の不公平条件では、参加者が受ける企業にはある大学の出身者が多く、参加者が所属する大学の学生がその大学の学生に比べて不利であるという情報が含まれていた。実験の結果、高同一視者においては、集団間の不公平は政府の不公平是正政策への支持的態度を高めたが、低同一視者においては、政策への態度に影響しなかった。また、高同一視者においては、集団間の不公平は個人の否定的結果における企業への原因推論を高めたが、低同一視者においては、企業への原因推論に影響しなかった。本研究は、獲得的地位の観点から、集団間の不公平が政策への支持的態度や社会構造への原因推論に与える影響を検討する研究の文脈に示唆を与えた。

キーワード : 不公平是正政策, 企業への原因推, 獲得的地位, 就職活動, 内集団同一視

「産業・組織心理学研究」に掲載された論文についてはJ-STAGEにて全文閲覧することが可能です。

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